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デュトロンが嫌いな理由…
それは(友達として)彼が好きだから!
これは1967年のフランソワーズの記事。「デュトロンが嫌いな理由」なんてショッキングな見出しですが、意外なことに、ふたりの第一印象はサイアクだったよう。彼のキライなところが延々と綴られていますが、ここまで言えるのは彼のことを信頼している証でしょうか。そして次のページには「彼が好きだから」となっていますが、「ジュテーム」に「とても」を意味するbeaucoupがつくと、LOVEがLIKEに変わってしまうのです。「とってもジュテームにはご用心」というワケ。


 

 はじめてデュトロンに会ったのは1962年。彼はシクロンヌのメンバーで、その時はまだギターしか担当してなかったんだけど、オートヴィーユ通りにある埃まみれの地下室で練習していたわ。そこはヴォーグ・レーベルのミュージシャンのためのスタジオなの。正直言って、彼のスタイルの良さにびっくりしたわ。でもすぐに、すごくシャイな人なんだって分かったの。この頃の彼が人見知りだったってことなら、私が話さなくても知ってるわよね。とにかく、私も彼に敢えて話しかけようとしなかったんだけど、そんな感じが良かったの。彼は、私の知るところだと、ひと月前に私の曲を作ってくれた人で、それもすごくヒットした「恋の季節」という曲。「この人はカッコいいけど、別にどうってことないわ」って思って、この時のことはすっかり忘れてたわ。

 それから1年か2年たって、デュトロンって名前を聞いたの。その時私はツアーのギタリストを探していて、ディレクターのジャック・ウォルソンが言ってたの。「ちょうどいいやつがいるんだ。ギターの腕は確かで、兵役から帰ってきたばかりで、すごく面白いやつ。デュトロンっていうんだ」
 同じ日に車に乗ってたら、モガドール通りでそのデュトロンにばったり出会ったの。(私の記憶が確かなら)彼は横断歩道を渡ってるところだった。この偶然がすごく嬉しかったから、私は車を止めて、彼に事情を説明したの。彼はおかしな面持ちで私を見て、私のオファーにあいまいな返事をしたわ。明らかに彼は、音楽の道に打ち込むことにしたみたいだった。私は彼の態度に気を悪くして、彼のことをよく知ってる私のディレクターに打ち明けたの。
 「彼の気持ちはちょっと分かる」ってウォルソンが説明してくれたわ。彼は良家のお嬢さまのフィアンセだから、ボヘミアンな生活をするとひんしゅくを買うらしいの。それに彼のフィアンセはきっと音楽が大嫌いよ! 私の見解だとそういうルールなの。だから私はツアーのギタリストとして、ベルナール・フェローを迎えたわ。なのに「キザ男」のデュトロンが私のまわりから姿を消すことはなかったの。どうしてかっていうと、同じ月にウォルソンが自分のアシスタントとして雇ったからなのよ。

 

 こうして私はヴォーグ・レーベルのオフィスでまた彼に再会したの。彼は最初の2回の印象に比べて、見違えるほどに変わっていたわ。大ぶりの黒いサングラスをかけて(マネージャーにありがちなスタイルよね)、威厳タップリに見えたわ。でも彼は今まで以上に内にこもるようになっていたの。ロビーですれ違うときも、彼が私に話しかけることは絶対になかったわ。話す機会があるとすれば、それは仕事の打ち合わせの時だけ。つまり、彼のことは、とても感じが悪い人だと思ってたの。
 ジャックが初めてレコーディングに来ると聞いたときは、彼がレピーヌのコンクールで優勝したばかりだと知らされていたの。でも私はたいして驚かなかったわ! このせいで私はすごくムカついて、彼のデビュー曲を聞くのを断ったの。
 「君は間違ってる」って、ウォルソンは怒ってた。レコードの出来は良くて、デュトロンはエディ・ミッチェルみたいに歌ってた。
 何日かあとに、偶然にラジオでデュトロンの曲「J'ai mis un tigre dans ma guitare」を聞いたの。今まで以上に信じられなくなったわ。「こんなの絶対に売れない!」って思ったもの。

 次の週だったわ。こんなショックは初めてだった。テレビを見てたら、すごい歌手を見つけたの。カッコ良くて、上品で、おもしろくて、「Et moi, et moi, et moi」って歌ってた。それがジャック・デュトロンだったの。この日を境に、私は彼のとりこになったわ。そしてこの不思議な人のことを知りたいと思うようになったの。私たちはまた再会して、たいていウォルソン(彼は仕事に疲れると仲間とロビーで息抜きしてた)が間に入ってたんだけど、少しずつ、彼に対する見方が変わっていったの。私たちはもう最初に感じてた嫌悪感を思い出すことはなかったわ。ただ単に不思議な、他の人とは全然違う友情が生まれていったの。それに私は彼のかたくなで、頑固で、侮蔑的で、近づきにくいところが嫌いだったけど、彼の性格のしくみがわかっていくにつれて、少しずつおもしろいと思うようになっていったわ。デュトロンは本当にイライラする存在なの。彼は絶対に人の言いなりにならないし、大事なことでも冗談にしてごまかしてしまうの。あなたが彼に何か頼むとするでしょ。あなたが退屈しないように、ちょっとしたことでもトラブルに変えてしまうの。それが分かったとき、あなたはきっと彼のことを好きになるわ。あなたは彼がもっと賢くて、繊細だってこと、知ってるわよね。それにそう思わせておきたいと願ってることも。

 それから、デュトロンとは20回くらい一緒に出かけたわ。彼はハマってることがたくさんあるんだけど、教えてくれないの。彼はどんなことでもばかばかしいことに変えてしまうのがクセになってるから、時々ユーモアに囚われてしまうのよね。彼にイライラするのは、彼が秘密主義だから。彼はあなたを喜ばせようとしてそばにいるのだけど、決して認めてほしいわけではないの。車を買う前だって、こんなモデルはどうだろうって、私を喜ばせるために何度も聞いてきたわ。
 今は分かるの。彼は楽しみを誰かと分かち合いたいんだってこと。デュトロンは私をびっくりさせてくれるわ。私は彼の性格の表し方がとても好きなの。何もマジメに取らないところとか、嫌なことを逃れる技とか、エスプリあふれる言い方とか、ビックリするくらい素晴らしいの。それと同時にそんな態度を演じている心の固い糸が怖くもあるんだけど。

 私はデュトロンに恋してはいないわ。彼は私のギターを刺激して、力と変化をくれる。たくさんの記事の中で私たちは婚約させられたけど、それはでっちあげだって分かってるでしょ。デュトロンと私に関する記事を初めて読んだとき、もう爆笑してしまったわ。ジャックが怒って家に電話してきたわ。彼が発した最初の一言はこう。「元気じゃないカイ?」って!